「ジャパン」が勝った!

日本大勝利!!!本田が決めてくれました。いや〜素晴らしい。8年ぶりの大興奮でした。

しかし、連日連夜、世界各国を代表する選手たちが行う「ガチ」の試合を観戦できるとはこの上ない幸せ、ワールドカップはまさに4年に1度の大祭典であると思います。その興奮はおそらくその昔、ローマ時代にコロッセオで剣闘士の戦いを観戦するローマ市民が得たものに匹敵するのではないでしょうか。剣闘士の栄光と苦悩も同等かもしれませんが。

サッカー経済学

さて、先週末に Freakonomics で紹介されていた本を読んだのですが、これが非常に面白かった。本の名は、「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理アメリカでは "Soccernomics" というタイトルで出版されているようです。サイモン・クーパー(サッカージャーナリスト)とステファン・シマンスキー(経済学者)がタッグを組み、経済学的手法でサッカーを分析するという試みです。彼らによって今までサッカーの常識とされてきた様々な事柄が覆されていくのですが、その中で特に面白かったPKにまつわる話を紹介してみよう、、、と思っていたのですが、それは次の機会に回し今回は日本の勝利を味わいたい。

勝てない理由

日本版の出版にあたり新たに『「ジャパン」はなぜ負けるのか』という章が加筆されています。なぜ勝てないのか、その理由としてよく挙げられるのは、曰く、組織としては機能するがゴールには消極的な日本人の民族性である、中盤でのパス回しは得意だが責任が重いフォワードは避けがちな日本文化である、そもそも体格の差が大きい、など多分に属性的なものになりがちです。しかし、実は文化はもっと柔軟なもので数ヶ月で壊せるものであり、体格の差は思うほど大きくない、とクーパーは言います。そして真の原因はヨーロッパで強豪同士が長年切磋琢磨して築き得た円熟に接することが出来ないからだ、と主張します。つまり巨人の肩に乗っていない、と。

この論には非常に説得力があります。なぜならばヒディンクという名将が実際に韓国、オーストラリア、ロシアと立て続けに3カ国を大舞台に押し上げたからです。彼のやったことはまさに凝り固まった文化を破壊し巨人の肩の上からピッチを望む状況を作り出すことでした。そして彼の率いた全てのチームが、各々の大会でそれまででは考えられないような成績を残したことは周知の通りです。

巨人の肩から

一個人が巨人に打ち勝つことは出来ません。巨人と戦うにはこちらも巨人の肩に乗るしかないのです。では巨人の肩に乗るにはどうすればよいのでしょうか?クーパーは方法は極めてシンプルだと言います。 1.経験豊富な(つまりはユーロ圏の)チームと数多くの対戦 2.経験豊富なチームでプレイする選手 3.経験豊富なチームを率いるような監督、この3つのどれかから学ぶだけです。日本はそもそも地理的にユーロから離れてしまっているために国際試合経験の質と量も限られ、監督やクラブとの人脈も築きにくい状況にある。今まで結果が出せなかった理由はただそれだけのことなのです。

そして今回、日本の凝り固まった文化を破壊し、変化させ、巨人の腰あたりまで登ってこれたのは、間違いなく本田圭佑のおかげでしょう。本田は得点を決めたから素晴らしいのではありません。彼の功績はユーロで築かれた群集の叡智を日本に持ち帰り、皆に広めたことなのです。

クーパーは日本やアメリカや中国はその国力から大きな潜在力を秘めていると分析しています。そして群集の叡智を取り込むことができれば2050年までにワールドカップで優勝できない理由は無い、と結論付けています。*1

2010年南アフリカ大会は始まったばかり。今後の試合も期待しています。頑張れ、日本代表。

*1:2050年までの優勝は日本サッカー協会が掲げる目標である。