またもや秀逸なNIKEのビデオ、Write the Future

ワールドカップを目の前にして新しく発表されたナイキの新しいプロモーションビデオが面白い。その名も"Write the Future"。

キーパーをかわしたドログバから打ち込まれた得点確実と思われたシュートをカンナバーロが素晴らしいプレイで防ぎます。実は、そんな素晴らしいプレイも、成功の暁に国中から英雄と称えられる自分の姿をニヤニヤと想像するという、一見下品な欲望から生まれたものかもしれません。ロナウジーニョが魅せる華麗なステップも、 facebook で like ボタンを押されまくり、 youtube で大量の動画がアップされ、世界中から褒め称えられたいという欲望がなせる芸術なのかもしれません。(残念ながら彼はワールドカップは出れないけれどね。) ロナウドに至っては、その功績がイケメン俳優*1により映画化、あげく自らの巨大な像が立てられることを夢想しながらフリーキックを蹴ります。


特筆すべきはやはりウェイン・ルーニーのパートです。舞台はワールドカップであろうイングランド v フランス。試合終了間際にルーニーから出されたウォルコットへのパスはリベリーにカットされます。その瞬間ルーニーが想像する将来がすさまじい。このプレイが原因となってイングランドはフランスに敗退、冷え込んだ国内の空気は株価の暴落をももたらし、ルーニーは完全に戦犯扱いとされます。サッカーの選手生命すら絶たれ、今やキャラバンに住むグラウンド整備員。それでもサッカーに関係している仕事をしているのがまた泣けます。そんな人生どん底のひげもじゃルーニーがふと外を見上げると大きな看板でフランスを背負って誇らしげに両手を広げるリベリーが・・・*2

我に返ったルーニーは、そんなみじめな人生は嫌だと、必死に走りリベリーからボールを奪い返します。そのあと夢想する成功の果実がまた面白い。「Just ROO it!」*3と書かれた新聞を投げつけるセスク、イニエスタ、ピケを見るに、おそらく最終的にスペインを破って優勝したのでしょう。なんと、果たして、ナイトの称号を授与されます。沸き立つイングランド国内の株価は上昇し、新生児の名前は皆ウェインという始末。特にその後の卓球は間違いなくこのビデオ中で最高のシーンです。*4

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私はこういう下品なインセンティブが大好きです。「あなたが思い描く未来に高級も低級もない、それに向かって突っ走るだけだよ」、"Write the Future" にはそんな意味合いもあるのかもしれません。

*1:友人から「欧州ではロナウドはブサイク扱いだよ」なんて話を聞いたことがあるが、この"夢"を見ると本当にそんな評価が多いのかもしれない。ちなみにイケメン俳優はガエル・ガルシア・ベルナル

*2:イングランドの国旗をボディペイントしたルーニーが力強く両手を広げるNIKEポスターが実際にある。(ビデオの中でも頭に来た若者が引き裂いている。)それを丸ごとフランスのリベリーに取られたというわけ。

*3:もちろん、これはNIKEの"Just do it"から。その前の"England in ROO-ins"は"in ruins"=「台無し」という意味。

*4:対戦相手はなんと現役テニス選手No.1のロジャー・フェデラー